大会長挨拶

第20回日本神経理学療法学会学術大会
大会長 森岡 周
(畿央大学大学院健康科学研究科主任・教授,同ニューロリハビリテーション研究センター長)

1965年「理学療法士及び作業療法士法」が制定され理学療法が定義されました。この定義では、理学療法の目的は「基本動作能力の回復」、対象は「身体に障害がある者」、そして方法は「運動療法あるいは物理療法」と明記されています。時代は令和へと移り変わり、対象疾患・障害は多様化し、方法はテクノロジーの進化に伴い、もはや上記の定義にはおさまりきれてはいません。

本大会テーマには「我々は何者か、どこに向かうのか -決別と融和、そして創発へ-」を掲げさせていただきました。これはゴーギャンの絵画「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか(ボストン美術館蔵)」に対するオマージュです。この絵画は人間の一生を比喩して描かれたものですが、神経理学療法は「どこから来て、どこに向かうのか」、そして、そもそもそれは「何者なのか」、これらの問いに対して、本大会では議論したいと考えています。

また、サブタイトルには「決別と融和、そして創発へ」を掲げました。私達人間は、しばしば原点回帰しつつ、成長しているかを内省します。成長は時に不連続性を伴います。それゆえ、一度培ってきたものをリセットし、時折、決別するタイミングが求められます。神経理学療法では、これまで流行のようにして理論・手技が輸入・開発されてきたものの、それがどのような病態に適応し、どのようなことに限界があるかといった明確な議論がないまま、信念対立の果て、あるものは廃れ、あるものは残り続け、今日に至っています。そもそも、これらの目的は「神経障害の人々を救う」ことであったはずです。「我々は何者か」、今一度そのスタンスを本大会で確認し、「我々はどこに向かうのか」について融和を図りつつ、共有意思決定する場にしたいと考えています。異なる意見を学術大会という同じテーブルで表出し、新たな知を創発するプラットフォームの実現を目指します。

このような趣意に基づく記念すべき第20回大会では、参加者の皆様と大阪の地で「なぜ神経理学療法があるのか?」を再確認したいと考えています。本大会は次の10年に向けたプログラム構成になっていると自負しています。本大会での集いが端緒となって、未来を担う一人でも多くの会員の研究・臨床が今後飛躍することを心から願っています。

是非とも大阪へ!